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株式会社ラブグラフを退職した

株式会社ラブグラフを退職した。

この記事では、入社してから2年間の個人的な振り返りを書き記しておく。 この記事がスタートアップでのエンジニアのキャリアに興味がある人の参考になれば幸いである。また、ラブグラフに興味を持ってもらえれば嬉しい。

DeNAを退職

まずは前職の話から。情報系の大学院を卒業した後、研究を続けるか少し迷いつつも、Web系の自由な雰囲気と優秀な人間に惹かれ、ディー・エヌ・エーに入社した。 入社してからはブラウザのソーシャルゲームの運用エンジニアに配属された。必要に応じて企画や分析をやったりもした。

2年ほど働いた後、エンジニアとしての成長が感じられなくなったため、部署の異動を考え始めた。会社自体は好きだったし良い評価も貰っていたので、転職は考えていなかったが、キャリアについて考えるいい機会と捉え、転職活動の真似事を始めた。その一環で話を聞いた会社の1つがラブグラフで、結局ラブグラフに就職を決めた。

ラブグラフにジョインした理由

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去年撮影したカップルさんとアシスタントさん

ラブグラフに決めた理由は3つで、「スキルアップ」「写真の世界に携われること」そして「ビジョン」だった。

スキルアップについては、1人で一通りのWebサービス開発を行う経験や、開発以外にも手広く担当するだろうスタートアップの環境に興味があった。 写真については、当時はただの趣味だったが日頃から写真の話をしながら仕事できるような環境は魅力的だった。ちなみに、この記事で使っている写真は全て自分の写真である。

最後のビジョンについては、純粋に良いなと思えるサービスだったのでジョインした。

ラブグラフは出張撮影のスタートアップで、「幸せな瞬間を、もっと世界に。」というビジョンのもと、カップルさんやご家族の幸せな瞬間を切り取って写真やイラストにするサービスを提供している。 この会社は本当にこのビジョンを達成するための会社であって、それ以上でもそれ以下でもない会社がこの会社である。

どちらかというと自分は「幸せ」とかいうキラキラしたキーワードからは遠いところの住人なのだが、それでも、代表の駒下が楽しそうな目で幸せな世界について語っていて、そのビジョンに共感した優秀なメンバーや全国のカメラマンが集まっていて、そして色んなお客様がサービスを好きだと言ってくれていて、そんな世界観が良いなと思ってしまったし、これを作る手伝いをするかと思ってしまった。

代表の駒下について一言説明しておくと、本当にアホなくらいひたすら同じ未来について語る人で(というか多分アホである)、しかし魅力的で幸せな世界観を語る人である。

ということで、良いと思ってしまった世界を実現するため、ジョインすることを決めた。フルタイムのメンバーとしては当時の5人目だった。

入社後の感想としては、「スキルアップ」「写真」「ビジョン」の3つは概ね期待通り満たした。1人で開発含め何でもやる力は身についたし、写真の話をするのも楽しいし、今でもやはり自信を持って良いと言えるサービスである。

ちなみに言うと年収は7割弱に下がった。十分な資金のないスタートアップにしては、むしろかなり頑張ってくれた額はもらったので、特に不満はなかった。

1年目:何もないところから、仕組みを作っていく

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2016年8月の引っ越し時に撮影

ジョインして初めに感じたことは、「仕組みがない」だった。

定例は朝会のみ、案件の責任者は曖昧、仕様は存在せず、開発案件は誰かが「欲しい」と言ったものをissueに書きためエンジニアの判断で実装していくだけ。 色んなものが個々人の力量によって進められていた(初期のスタートアップはそんなものだと思うし、それで良いと思う)。

先人達により色んなものが仕組み化されていた前職と比べ、立派な高層ビルの中から何もない平野に移動したような感覚を覚え、スタートアップにきたなと感じた。


そんな中で自分がやったことは、スタートアップのスピード感と現状のメンバーでやれることを考えつつ、組織の拡大にあわせ、少しずつ仕組みを作ってチームとしてサービスを作っていくことだった。

開発メンバーとしてはPMの役割を緩く担い、週2で開発定例を始めて、案件の優先度管理や進捗管理、振り返り、中長期計画の策定などを行なった。

また、途中からマーケティングやCS、カメラマンのマネジメントなどのチームにも顔を出して、プレイヤーとして改善を行いつつ、定例を開き、目標を決め振り返りのフォーマットを定めて、チームがチームとしてサービスを改善していけるような仕組みを考えていった。

…と言えれば格好良かったが、実際のところはなかなか難しかったというのが事実で、初めての分野でプレイヤーとして結果を出すのも難しければ、マネージャーとしても力不足を痛感した。 とはいえとにかく色んなところに顔を出して改善を回し、もちろん開発も進めて、という日々を過ごした。


ちなみに自分自身がカメラマンでもあるので、カメラマンとしてサービスを使い撮影に赴き、納品機能その他の管理画面をドッグフーディングしたり、撮影の間にゲストにヒアリングをして改善ポイントを探ったりもしていた。「エンジニアが一番のユーザであるべき」とは前職で学んだマインドだが、これについてはこれ以上なく体現したと思っている。

2年目:会社経営の難しさ

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2017年8月の経営合宿

会社にジョインして1年が経ち、インターン生や業務委託も含めると20人以上の規模になったころ、創業期から携わっていた優秀なエンジニアが一人辞め、エンジニアが1人となった。

穴は大きく、自分は開発に集中してカバーしようと思っていた矢先、その3ヶ月後にビジネス面を支えてくれていたCOOが辞めた。

開発とビジネスの両輪が会社から離れ、危機感を感じ、経営会議に参加させてもらい、会社経営についても考える日々が始まった。


そこで感じたことは、月並みだが、実際にやるのと口を出すだけではこうも違うのかということだった。自分が経営について語るのは烏滸がましいが、この1年で感じたことを簡単にここにまとめてみる。

選択と集中 : やりたいことは現状の経営資源でやれることよりも常に少し多めになりがちだ。どんなに気をつけていても、振り返ってみるとやはりもっとコアな事業に集中すべきだったと思うことが多々あった。経営資源を集中させるための明確な経営戦略の重要さを痛感した。

Get Things Done : やるべきことが決まればあとはやるだけなのだが、やりきるのはなかなか難しい。やろうと言ったことが何の障害もなくできることなんて稀だが、その上でもそれをやりきることができるかは、会社が前に進んでいけるかを決める重要な要素である。"Get Things Done" とは前COOがよく言っていた言葉で、今でも好きな言葉だ。

大切なのは人 : スタートアップの膨大な量のタスクを上手く実行するのは、結局人だ。優秀な人が増えれば全てが進むし、人が足りていない状態であれこれ言って雰囲気が悪くなっても仕方ない。今のメンバーが活躍できないのは本当に最悪だ。事業について考えるのは大切だが、事業を作る人をどう採用/育成するかはもっと重要だと思う。(そして更に言えば、名もないスタートアップにジョインしようと思わせる魅力的なビジョンが最重要だ。)

プロダクトを磨く : なまじ入社当初からサービスの基本部分は完成されていたため、ビジネス側はプロダクトの磨き込みよりも、分かりやすく効果の出るマーケティングに力を入れがちだった。プロダクトの理想像を腰を据えて考えたいと感じていた頃、現CPOの吉村がジョインし、PMとして素晴らしくここをまとめあげてくれた。よく言われることだが、プロダクトが完成されていない状況でマーケティングを頑張っても穴の空いたバケツで水を掬っているようなもので、短期的なKPIに捉われずプロダクト改善の優先度をあげるべきだった。

優れた問いは優れた答えに勝る : これは学んだことではなく、人生で常に大切にしている考えだが、経営の上でもやはり必要な考え方だ。問題をいかにうまく解決するかは大切だが、そもそもどんな問題を解くのかの方が遥かに重要で、会議中によく突っ込みをいれていた。この辺の話は社内のメンバーにもよく伝えていた話で、退職日に類似の話をしてくれる人が多かったので書いてみた。

開発の話

ビジネス側のことをメインに書いてしまったが、もちろん業務のメインはエンジニアとしての仕事で、開発をしていた。特にエンジニアが1人になってからは、全ての開発に関わる課題を自分1人の力で解決しなければならず、なかなか大変だった。ただWebサービスに関わる一通りの要素をそれなりのレベルでできる自負が持てたのはよかったし、また外部の副業エンジニアや技術顧問からも、技術レベル高くやっていると言ってもらえてよかった。

また、経営陣に参加し始めたころから、肩書きとしてはリードエンジニアとなり、開発組織を作るというミッションが明確に与えられた。すなわち、採用とマネジメントにも責任を持つことになった。

採用については難しく、結果としては自分が正社員エンジニアを採用することはできなかった。採用に銀の弾丸はないのだからやるべきことを地道にしっかりとやっていくべきだったというのが大きな反省だが、愚痴をこぼすと、地道な努力もそれはそれでしていたし、技術ドリブンでもない小さなスタートアップに良いエンジニアを呼び込むのはなかなか厳しく、エンジニア採用はやはり難しいとも思う。何人かの優秀な候補者の人に「成澤さんがいるのが魅力的」と言ってもらえたのはやはり嬉しかったし、これからもそう在りたい。(ちなみに現在は自分以外に正社員エンジニアが在籍している)

マネジメントについては、正社員以外だと、時期も期間もバラバラだが副業を計10人、フルタイムの業務委託を計3人、インターン生を計4人採用して開発チームを作っていた。エンジニア1人は諸々辛いので彼らに大分助けられつつ(本当に感謝してます。ありがとう)、とはいえ結局ボトルネックとなるのは1人しかいない正社員で、正社員採用を頑張らないと仕方ないという気持ちだった。インターン生がすくすくと成長してくれたのは個人的には嬉しかったことで、自分も学生時代のインターン先(PFN社)では大変お世話になったので、自社でも同じことができていたら嬉しい。

ラブグラフを退職

ここまで述べておいて何なんだとは思うが、ラブグラフを退職した。

サービスは未だに良いものだと思っているし、もっとサービスを伸ばしたかったし、残していくエンジニアやチームメンバー、そしてカメラマン達には本当に申し訳ない気持ちで一杯だが、ビジョンに幸せを掲げている以上、自身の幸せについても真面目に考えなければいけないと思った。長い間迷っていたが、最近は事業も順調に伸びているのと、色々あって、結局このタイミングで辞めることにした。退職理由はここでは詳しく書かない。

自分が言っても説得力がないかもしれないが、ラブグラフに興味をもってくれた人はぜひ話を聞きにいってもらえると嬉しい。全職種で社員を募集中だ。多分このリンクから応募できる


ということで退職するが、2年間でお世話になったたくさんの方々、今まで温かい目で見守っていただき本当にありがとうございました。そして、全国のラブグラファー、イラストレーターさん、そして社内のメンバー、特に開発チーム、特にあんみつとゆきな、そして駒下、改めてお疲れさまでした。これからも頑張って!

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最終日のオフィス。人が増えた…というより、物が増えたような写真になってしまったが、とにかく大分会社らしくなったのかなと思う。


これからどうするか

次に何をするかというと、しばらくはフリーランスのエンジニアとして、時間とお金に余裕をもってゆっくりと好きな技術を磨く予定である。フリーランスを長く続けるつもりは今のところなく、1年ほどしたらまたどこかに就職すると思う。

おかげさまで年内の予定は既に埋まっているのだが、副業的な参加や、年明けからの参加は可能かもしれないので、よければ声がけいただけると嬉しい。スキルとしてはWebアプリケーション開発全般(特にRubyOnRails/Vue.js/AWS)に対応できる。

また、この記事の通りスタートアップで一通りの役割はこなしたのと、学生時代は言語処理をやっていたので、この辺のスキルとマッチするようなお仕事も募集中である。言語処理については学生時代に第一著者で海外のトップカンファレンスに通した経験がある。この分野では当時国内最年少だった。

興味ある方は下記ポートフォリオページをぜひ。

katsumanarisawa.me

pdfの履歴書はこちら。

https://katsumanarisawa.me/resume201809.pdf

終わりに

ここまで読んでもらえる人が何人いるのか分からないが、スタートアップのキャリアの参考になっていれば嬉しい。また、ラブグラフに興味を持っていてもらえれば嬉しい。

自分に何かあれば、以下よりお気軽にご連絡ください。恵比寿、中目黒、渋谷あたりであればいつでも行けると思う。

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定番のウィッシュリストの代わりに、ラブグラフをプレゼントとして贈ることができる素敵なギフトサービスがあるので、そのリンクをのせておく。大切な友人へのプレゼントにどうぞ。特に結婚前の友人カップルなどにオススメである。

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